ビール瓶が鳴った

仕事、そんなにひどくなかった。でも、ひどくならないように、
集中しているのは、やっぱり、そんなに楽じゃない。
これが、楽で、当たり前のことになったら、また、何か違うだろう。
でも、良かったことは、スーシェフが、仕事の後、
もうひとりの、長く働いている人も一緒に、
ビールを飲みに連れて行ってくれたことだ。
シェフが、何かするときに、ぼくのことも数に入れているから、
スーシェフもとりあえずそうしてくれるだけなんだろうけど、
それでも、ビールが仕事の後に飲めるのは、ありがたい。
たかがビール、されどビール、好きな子の笑顔も見られない日々じゃ、
そんなことでも、生き返るのにはじゅうぶん。
何かを成そうとするときは、多くを望むな足ることを知れ。
金も女も地位も名誉も要らぬ、手に負えない人間でいい。
お決まりの場所は、寮のそばの、コートヤードマリオットの、
中にあるレストランに併設されているバー。
このテラスで、シーシャを楽しみながら、350mlのビール瓶を、
2本ずつ飲んで、オニオンリングとチキンウィングをつまむのが、
いつものやり方みたい。っていうか禁煙しているのに。
ドバイではあきらめました。もうあきらめました。
まあ、1年とか2年とか吸っちゃっても、その後、また、
やめればいいだけだから。今はこれでいいよ。
これがここでの生活なら、それでいい。郷に入ればゴータマシッタールダ。
ビール瓶を手に持ったまま、傾けていたら、強い風が吹いて、
ぽーっとのんびりした音が響いたから、とてもいい気分だった。
こんな偶然から、人は笛というものを発明したのだろうか。
そういえば、砂漠で、満天の星を期待していたのだけど、
あんまり空気がきれいじゃないのか、たいしたことはない。
鷹番の、冬の夜空が、今までに見た中で、一番きれいだと思う。
そんなわけで、また、帰ってきたのが遅くなってしまったので、
明日も洗濯できないんじゃないかなあと思いながら、寝ることにする。
おやすみなさい、おはよう、きみに素敵な一日を。