さるごりらちんぱんじー

シェフデキュイジーヌがいないと、やる気でない。
仕事そのものに対して純粋にはなれず、ぼくは、
どうしても、人との相性や気分を優先してしまう。
「偉い人」に大事なことは、年齢や、経歴ではなく、
「その場の支配力」ではないかなと思う。
スーシェフだって、ぼくみたいな下っ端に、
そんなこと思われたくないだろうけど、
彼は、その点で、イマイチだなと思う。
もうひとり、長くいる人の方が、ずっと向いている。
彼がオヤスミのときは、全然、関係ないことを、
頭の隅に置きながら、仕事をしている。
そして、そのせいか、今日は失敗して、
ちょっと落ち込んだので、明日からはもう少し、
仕事に純粋に向き合おうと思う。
慣れてきているのに、失敗するなんて、もってのほか。
でも、いい気分で働かせてほしいだけなんだけど。
言い訳はやめよう、言い訳っていうか、そんなの理由にならない。
とにかく、失敗すると、くやしいし、頭にくるから、
そうならないためにも、ちゃんと、やることはやる。
ただの肉体労働者のままでやめないためにも、
こんなところは余裕でクリアできるというのを見せなくちゃ。
誰かがわかってくれるのを待つよりも、わかってもらうしかない。
普段の生活ではそんなこと思わないけど、仕事は別。
面白いもので、慣れてくると、キッチンやホテル全体を、
すごく狭く感じるのに、ちょっとでも外れると、
なんだか広くてどこにも手が届かないような気持ちになって、
歩いても歩いてもバス停に着かなかったりする。
まだ、始まって、少ししか、時間は過ぎていない。
こんなところで、止まっている場合じゃない。
眠くなるまで、動けなくなるまで、まだ知らない場所に行けるまで、
走るのは苦手だから無理だけど、ときどき、空でも眺めながら、
のどがかわいたらビールを飲んで、歩いてみようと思う。